日本のハンバーガー市場では、マクドナルドが圧倒的なシェアを持つ中、各チェーンが独自の戦略で顧客を獲得しています。その中でも、今年10月に300店舗目が出店されたバーガーキングは、今勢いのあるハンバーガーチェーンの一つと言えるでしょう。その一方で、モスバーガーは、日本発祥のハンバーガーチェーンとして、国産野菜の使用にこだわるなど独自の地位を確立しています。今回は、ONEに投稿されたレシートデータを分析し、バーガーキングとマクドナルド、モスバーガーの3つのハンバーガーチェーンについて、利用する人々の属性や購買の特徴を探っていきます。調査概要本調査では、日本の主要ハンバーガーチェーン3社(マクドナルド、バーガーキング、モスバーガー)のレシートデータを分析しました。分析期間は2024年10月から2025年9月までの12ヶ月間で、利用者属性、購買パターン、地域特性、時間帯別利用、購買商品などを調査しています。調査結果どれくらいのレシートが投稿されているのか?具体的な比較に入る前に、まずは各チェーンの利用状況を見てみましょう。以下のグラフは、ONEに投稿された全レシートに占める各チェーンの出現率の推移を示しています。マクドナルドの出現率は月平均で約9〜10%と圧倒的に高く、モスバーガーが約1.5〜1.8%、バーガーキングは約0.3〜0.5%です。マクドナルドの出現率はバーガーキングの約20〜30倍にも及び、店舗数の差が利用機会に大きく影響しています。しかし、興味深いのは、バーガーキングとモスバーガーの出現率が徐々に上昇している点です。特にバーガーキングは2024年10月の0.32%から2025年9月には0.48%まで上昇しており、着実にファンを増やしています。誰が利用しているのか?性別・年代・地域で見る顧客像次に、各チェーンを利用している人の属性を見てみましょう。次の3つのグラフは、各チェーンのレシートの属性比率と同期間にONEに投稿された全レシートの属性比率の差分を表したものです。性別構成を見ると、特に女性に支持されている一方、バーガーキングはより男性に支持されていることが分かります。年代別では、各チェーンとも20〜40代からの支持が厚く、60代以上の比率は小さくなっていますが、微妙な違いも見られます。モスバーガーは60代以上の差分が最も小さく、ハンバーガーチェーンの中ではシニア層に支持されていることが分かります。 一方で、若い世代に支持されているという印象もあるバーガーキングですが、50代の差分が唯一プラスであり、中年層にも支持されているようです。また、地域を見ると、地域別の出店店舗数の違いからか、バーガーキングは関東に偏重しており、東北や九州・沖縄の比率が低くなってなっています。マクドナルド・モスバーガーは地域差が小さく、全国で広く愛されているようです。いつ食べているのか?時間帯が明かす各チェーンの役割利用時間帯を分析すると、各チェーンの「役割」の違いが少し見えてきます。朝マックがあるマクドナルドは、朝6時〜8時台のレシート比率が他チェーンを大きく上回っており、朝食市場で圧倒的な強さを見せています。一方、バーガーキングとモスバーガーは11時〜13時の昼食時間帯に利用が集中しています。特にモスバーガーは12時台が17.7%と最もピークが高く、「ランチにしっかりとした食事を」というニーズに応えてると予測されます。また、大きな差ではありませんがバーガーキングは18時-19時台の比率が3チェーンの中で最も高く、夕食としての需要も一定あることが分かります。いくら使っているのか?レシート単価に見る各チェーンの位置づけ各チェーンでの支払い金額を見ると、明確な棲み分けが存在します。指標バーガーキングマクドナルドモスバーガーレシート単価¥1,638¥1,202¥1,577一人当たりレシート数2.34回8.13回2.90回ユーザー単価(1年間の合計)¥3,832¥9,774¥4,573レシート単価はバーガーキングが最も高く1,638円、次いでモスバーガー1,577円、マクドナルド1,202円です。特に注目すべきは、マクドナルドで500円未満の会計が31.7%を占める点です。これは、100円マックやコーヒー単品利用など、気軽な利用が多いことを示しています。一方、バーガーキングとモスバーガーは500円以上の会計が過半数を占めており、「しっかりとした食事」として利用されていますが、バーガーキングは500円-1000円が中心で、一人での利用が中心であるのに対し、モスバーガーは2000円以上の比率が3チェーンの中で最も高く、家族での利用も多いことが伺えます。どんな商品を買っているのか?購買パターンから見える特徴レシートデータから抽出した購買商品を見ると、各チェーンの特徴がより鮮明になります。次の表は、レシートに印字された商品をバーガー・サイドメニュー・ドリンクの3種に分類し、各チェーンにおける出現率上位5品目をランキング化したものです。※セット商品はそれぞれ分解して集計をしています。マクドナルド:定番商品とポテトの圧倒的人気バーガー:チーズバーガー(6.2%)やテリヤキマックバーガー(5.3%)など、安価な定番商品が上位を占めています。サイドメニュー:マックフライポテトMサイズが24.2%と圧倒的。S・Lサイズを合わせると、50%超のレシートにポテトが含まれています。ドリンク:コーヒー類が上位に複数ランクイン。プレミアムローストコーヒーのM・Sサイズで合計14.7%と、カフェ利用もされていそうです。バーガーキング:ワッパーとフライドポテトが二本柱バーガー:ワッパーシリーズが上位5品すべてを占め、特にワッパーチーズ(8.6%)が人気。ボリューム重視の品揃えが支持されています。サイドメニュー:セット購買が多いと考えられ、フレンチフライM(31.6%)・S(27.9%)が圧倒的人気。キングオニオンリング(6.5%)も特徴的な商品として選ばれています。ドリンク:コカコーラ(16.7%)がトップ。炭酸飲料の比率が高く、ボリュームのある食事に合わせた選択をされています。モスバーガー:バラエティ豊かな商品選択バーガー:モスバーガー(7.5%)とテリヤキバーガー(7.1%)が2トップ。海老カツバーガー(4.5%)など独自商品も人気です。サイドメニュー:オニオン&ポテト(19.7%)という独自商品がトップ。モスチキン(8.4%)も差別化商品として支持されています。ドリンク:ジンジャーエール(7.0%)がトップという特徴的な結果。コーヒー類も人気ですが、他チェーンより炭酸飲料のバリエーションが選ばれています。このランキングから、各チェーンの商品戦略が表れています。マクドナルドは「定番商品の安定した人気」、バーガーキングは「主力商品のワッパーに代表される、ボリューム重視の品揃え」、モスバーガーは「独自商品による差別化」。特にサイドメニューでは、マクドナルドとバーガーキングがポテト中心なのに対し、モスバーガーはオニオン&ポテトという独自商品で差別化を図っている点が印象的です。まとめ:3つのチェーンが共存する理由今回の分析から、日本のハンバーガー市場において、3つのチェーンがそれぞれ異なる役割を担い、共存していると考えられるかもしれません。■ マクドナルド:「日常使いの国民的チェーン」朝から夜まで、安価で手軽に利用できる存在。利用頻度が圧倒的に高く、朝食市場では独走状態。500円以下の気軽な利用から、ファミリーでの食事まで幅広いニーズに対応しています。■ バーガーキング:「都市部のがっつり系」関東中心の都市部展開で、男性比率がやや高め。レシート単価は最も高く、しっかり食べたい時の選択肢として定着。ボリューム重視の独自ポジションを確立しています。■ モスバーガー:「プレミアムファストフード」女性・高年齢層に強く支持され、品質重視の層に選ばれる存在。利用頻度は低いものの、「ちょっと良いものを食べたい」時の選択肢として差別化に成功しています。各チェーンが異なる顧客層、利用シーン、価格帯で緩やかに棲み分けており、それぞれの「派閥」が形成される理由の一端が数字から垣間見えました。「安さと便利さ」「ボリュームと満足感」「品質とこだわり」という、それぞれの強みを活かした戦略が、日本のハンバーガー市場の多様性を生み出しています。今後、各チェーンがどのような戦略で市場シェアを変化させていくのか、また新たなプレイヤーの参入によって勢力図がどう変わるのか、引き続きレシートデータから注目していきます。いかがだったでしょうか。ONEが収集しているレシートデータでは、スーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアのほか、今回のように飲食店のデータも分析することが可能です。 何か気になる分析テーマがあれば、是非お問合せフォームよりお問い合わせください。