未来の明治を形づくる横断組織「価値創造戦略本部」とは—— 栗原さんが所属されている「価値創造戦略本部」とは、どのような部署なのでしょうか。明治では、乳製品や菓子などの事業ごとに本部を置く「事業本部制」をとっており、それぞれが独立して商品開発や販売、マーケティングを行っています。そうした中で、これらの事業を横断し、全社的な視点から新しい価値を生み出していくために設立されたのが「価値創造戦略本部」です。およそ2年前に発足したこの本部は、「中長期的な視点で新しい価値を創り出す」ことをミッションに、各事業を支える横断的な取り組みを進めています。—— 「価値創造戦略本部」という名前の通り、“未来をつくる”ことが目的なんですね。そうですね。たとえば、既存の商品の延長線上だけでなく、新しい事業領域の可能性を探ることや、ブランドの価値を高めるための仕組みづくりなどにも取り組んでいます。これまでの明治は「縦のつながり」が強く、隣の部署で何をやっているか見えにくい環境でしたが、今は「全社として横の連携を強める」動きが出てきています。その中で、価値創造戦略本部が横断的な役割を担っている形です。価値創造戦略本部内は、担当ごとに4つの部に分かれており、私はそのうちの「コミュニケーション部」に所属しています。 —— 栗原さんがいらっしゃる「コミュニケーション部」では、どのような活動をされているのですか。コミュニケーション部は主に「ブランドコミュニケーションチーム」と「DXチーム」の2つからなり、前者は各ブランドのコミュニケーション戦略を立案・実行する活動を担っています。私の所属するDXチームでは、デジタル技術を活用して顧客との接点を設計し、「明治会員IDサービス」の企画・運営や、今後のデータ活用方針の策定を担当しています。継続的なコミュニケーションで明治ブランドに親しみを感じてもらいたい—— 「明治会員ID」という会員サービスは、どのような経緯で始まった施策なのでしょうか。「明治会員IDサービス」は、2023年9月に育児記録アプリ「赤ちゃんノート」の立ち上げと同時にスタートしました。これまで明治では、ブランド・事業ごとに独自のキャンペーンや顧客接点を持つことが多い状況がありました。そのため、お客様から見ると「同じ明治なのに、それぞれ別の窓口から連絡が来る」といった状況があり、明治として一貫したユーザー体験を感じづらい部分がありました。そうした課題を解決し、“明治として”お客様とつながるための共通基盤を作りたいという思いから、この取り組みが始まりました。—— これまでブランド単位で行っていた取り組みを、全社で統合したのですね。はい。明治はR-1やチョコレート効果、ザバスなど数多くのブランドを持っていますが、各事業が独立しているため、顧客の横断的なデータや行動傾向を把握するのが難しい状況でした。ブランドごとに「ファンづくり」を進めてきたものの、全社的な観点で“明治のファン”を育てる活動は十分にできていなかったのが課題でした。「明治会員ID」は、そうした課題を解決すべく、全ブランド共通でお客様を理解し、長期的な関係を築くための仕組みです。——具体的には、どのような目的を持って運用されているのでしょうか。目的は大きく二つあります。ひとつは、お客様一人ひとりと継続的にコミュニケーションをとるための基盤づくり。もうひとつは、データを活用してより良い体験を提供することです。これまでのようにキャンペーン単位でお客様とつながるのではなく、IDを通して継続的にやり取りができるようになったことで、「明治がどんな商品をどんな方に届けているのか」を把握しやすくなりました。——どのくらいの会員の方が登録されているのでしょうか。サービス開始から約2年が経過した現在で、会員数は13万人を超えています。当初は年度内に16万人を目標としていたのですが、想定よりも早いペースで達成できたため、今はさらにその上を目指している段階です。もちろん数字だけを追うのではなく、会員の方々一人ひとりに寄り添うようなコミュニケーションも大切にしており、 “質の向上”にも意識を向けて活動しています。顧客理解を深めるために、“購買データ”という新たな視点を取り入れる——「明治会員ID」を拡大していく中で、WED社が展開するレシート買取アプリ「ONE」を導入されたとお聞きしました。どのようなきっかけで導入を検討されたのでしょうか。きっかけは、「購買データを活用した顧客理解」に課題を感じていたことです。明治会員IDでは、お客様の性別や年齢、居住地域などの属性情報や、各アプリ・サービスの利用状況までは把握できていました。しかし、「実際にどの商品をどのくらい購入しているのか」という購買データは取得できておらず、お客様の実際の行動を可視化することが難しい状態でした。そんな中、WEDさんのレシート買取アプリ「ONE」を知りました。「ONE」は購買データを豊富に持つ国内最大級のアプリであり、会員数拡大にもつながるポテンシャルを感じ、連携を検討し始めました。——他社のレシート買取アプリやリサーチサービスもある中で、「ONE」を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。決め手は大きく2つあります。ひとつは、ユーザー規模が非常に大きいこと。ONEはレシート買取アプリの中でもトップクラスの会員数を誇っており、キャンペーン実施によって確実に新規顧客へリーチできる点が魅力でした。もうひとつは、他社ではあまり見られない「会員登録でキャッシュバック」という企画ができる点です。会員登録を促進しながら、その登録者の購買情報をもとに分析できるという点が、私たちの課題解決と非常に相性が良いと感じました。——実際には、どのような施策を実施されたのでしょうか。2024年11月以降、複数回、「会員登録マストバイ施策」を実施しました。これは、過去に明治商品を購入したONEユーザーに対して、ONE上で新規会員登録を完了した方に対してキャッシュバックを行うという企画でした。条件やキャッシュバック額を調整しながら次々と施策を実施し、最終的には累計で約5,000人の新規登録を達成しています。——ONEの費用対効果をどのように評価していますか。期待した効果は十分に得られたと感じています。そのため、何度も繰り返し、ONEを活用しています。また、自社でキャンペーンを企画・準備するよりも、ONEを利用することで全体のコストを大幅に削減できる点もメリットと感じています。施策開始後の作業は週1回の進捗レポートを確認し、条件調整のやり取りをする程度で、ほとんど手間はかかっていません。コストパフォーマンスは非常に高いと感じています。豊富なデータを活用して、新たな施策を展開できる——ONEを活用した施策を通して、どのような成果や変化を感じられましたか。一番大きかったのは、「データで“明治ファン”の姿が見えるようになったこと」です。これまでも、「明治商品をよく買ってくださる方が会員登録しやすいだろう」という仮説はありましたが、実際に数値として可視化できたのは初めてでした。ONE上でのマストバイ施策情報と会員情報を掛け合わせて分析したところ、明治商品を日常的に購入している方ほど会員化率が高いという結果が得られました。この結果を踏まえ、ONEアプリ上で明治商品のマストバイを実施し、その参加者に対して明治会員IDのマストバイを実施するといった、複数のマストバイの施策を組み合わせた取り組みも進めています。—— なるほど。データで仮説が裏づけられたわけですね。はい。お客様の購買データを持つことで、ようやく「どんな人がどのブランドをどのくらい買っているのか」という行動ベースの理解ができるようになりました。これまでは、アンケートやキャンペーン応募情報などからしかお客様像を推測できなかったのですが、今後は購買行動を起点にしたより深い分析が可能になります。特定ブランドをよく購入している方に向けてアンケートをお願いしたり、逆に購入が少ない層に新商品を紹介したりと、データをもとにした双方向のコミュニケーションを目指しています。——今後、ONEのデータをどのように活用していきたいと考えていますか。今後は、会員データと購買データを掛け合わせた「顧客理解の深化」に力を入れたいと思っています。たとえば「R-1」や「チョコレート効果」を頻繁に購入している方は、健康意識が高いと考えられます。こうした方へは、健康に役立つ商品を重点的にご案内するなど、一人ひとりの嗜好やライフスタイルに合わせた情報提供を行い、より満足していただける体験の創出を目指したいと考えています。——まさに、“データドリブンなファンづくり”が進んでいるのですね。そうですね。最終的には、「明治だから買う」「明治の取り組みに共感して会員になる」といった関係性を築いていけるようにしたいと考えています。そのためにも、ONEをはじめとした外部データの活用を通じて、お客様一人ひとりの姿をより深く理解し、より価値あるコミュニケーションを続けていきたいです。——実際の業務における、WED社との連携はいかがでしたか。非常にスムーズでした。施策設計から実行、分析まで、WEDさん側でスピーディに対応していただける点が助かりました。特に印象的だったのは、事前準備の明確さです。アンケート設問や入稿データの仕様などがしっかりと整理されていたため、こちらが迷うことなく準備できました。データを基盤に、“明治ファン”との関係をより深く育てていく——今後、明治会員IDやONEでの取り組みをどのように発展させていきたいとお考えですか。顧客一人ひとりに適したコミュニケーションを行い、LTV(生涯顧客価値)を高められたらと思っています。そして、会員数の拡大とともに、既存会員の満足度を高めていくことにも注力していきたいと考えています。これまでの取り組みを通して、明治会員IDの会員基盤は順調に成長していますが、私たちが目指しているのは単なる“会員数の拡大”ではありません。お客様一人ひとりにとって「登録してよかった」「これからも使いたい」と思っていただける体験を提供することが目標です。「明治会員ID」を通じて、お客様が“明治の世界”を楽しめるよう工夫していきたいと考えています。——WED社との今後の取り組みについては、どのようにお考えですか。今後も、会員数拡大という点ではONEを活用しつつ、さらに購買データの分析や活用の領域でもご一緒できればと考えています。今回の施策を通じて、「データをどう活かすか」の重要性を改めて実感しました。購買データと会員データを組み合わせることで、より精緻にお客様を理解できるようになり、その結果としてブランド横断のコミュニケーション設計やマーケティング施策の高度化にもつながります。WEDさんには、引き続き分析やご提案などでご支援をいただけると嬉しいです。